アパートを建てると、土地の評価はどう変わるか

相続税の実務

前回、住宅ローンとアパートローンの違いについて整理しました。今回は、その続きとしてアパートを建てると土地の相続税評価がどう変わるかをご説明します。

「アパートを建てると相続税が下がる」というお話は、よく耳にされると思います。実際、評価額は下がります。ただ、どの部分が、どういう理屈で、どれくらい下がるのかを知っておくと、判断がしやすくなります。


更地のままでは、評価は下がりません

まず前提として、何も建っていない土地は自用地として評価されます。路線価に面積を掛けた金額が、そのまま評価額になります。

評価を下げる仕組みが働くのは、その土地の使い方に制約が生まれたときです。

アパートを建てて人に貸すと、所有者はその土地を自由に使えなくなります。入居者がいる以上、すぐに売ることも、建て替えることもできません。その制約を評価に反映させるのが、これからご説明する仕組みです。


土地の評価 ―― 貸家建付地

アパートの敷地は、貸家建付地として評価されます。

算式

貸家建付地の評価額
= 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

3つの割合が出てきます。順にご説明します。

借地権割合

地域ごとに定められており、国税庁の路線価図で確認できます。路線価の数字の後ろにアルファベットが付いていて、それが割合を表します。

記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

都市部ほど高く、郊外や農村部では低くなる傾向があります。ご自身の土地の割合は、国税庁のサイトで調べられます。

借家権割合

全国一律で30%です。

賃貸割合

課税時期に実際に貸している部分の割合です。

賃貸割合 = 賃貸されている各独立部分の床面積合計
          ÷ 各独立部分の床面積合計

10室のアパートで8室が埋まっていれば、おおむね80%ということになります。

なお、たまたま入居者の入れ替え時期にあたっていたような一時的な空室については、賃貸中として取り扱える場合があります。ただし、長期間空いたままの部屋は該当しません。この判断は事実関係によりますので、個別にご確認ください。

計算してみると

自用地評価額5,000万円、借地権割合60%、満室(賃貸割合100%)の場合です。

5,000万円 ×(1 − 0.6 × 0.3 × 1.0)
= 5,000万円 × 0.82
= 4,100万円

900万円の評価減になります。


建物の評価 ―― 貸家

建てた建物も、評価が下がります。

算式

貸家の評価額
= 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は30%ですので、満室であれば固定資産税評価額の70%になります。

ここで押さえておきたいのは、そもそも建物の固定資産税評価額は、建築費よりかなり低いという点です。構造や仕様によりますが、建築費の5割から6割程度になることが多いようです。

つまり、建物については二段階で下がります。

段階金額の例
建築費7,000万円
固定資産税評価額(建築費の約50%と仮定)3,500万円
貸家評価(満室)2,450万円

全体で見るとどうなるか

現金7,000万円でアパートを建てた場合の例です。土地は自用地評価5,000万円、借地権割合60%、満室とします。

建てる前建てた後
土地5,000万円(自用地)4,100万円(貸家建付地)
建物―2,450万円(貸家)
現金7,000万円0円
合計1億2,000万円6,550万円

差額は5,450万円です。

現金のままなら額面がそのまま評価額になりますが、不動産に変えることで評価額が下がる。これが「アパートを建てると相続税が下がる」と言われる仕組みです。

なお、建築資金を借入で賄った場合も、考え方は同じです。借入金は債務控除の対象になりますが、手元の現金は減りません。どちらの方法でも、課税価格への影響はおおむね同じになります。この点は、別の記事で整理する予定です。


小規模宅地等の特例が使えると、さらに下がります

アパートの敷地は、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の対象になり得ます。

200㎡まで、評価額が50%減額されます。

先ほどの例で、土地が300㎡だったとします。

貸家建付地評価額 4,100万円 ÷ 300㎡ = 1㎡あたり 約13.7万円

200㎡分:約2,733万円 → 50%減額 → 約1,367万円
残り100㎡分:約1,367万円

合計:約2,734万円

4,100万円が2,734万円まで下がります。

ただし、3年以内の制限があります

ここが重要です。

相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則としてこの特例の対象外とされています(措法69条の4第3項第4号)。

つまり、アパートを建ててから3年以内に相続が発生すると、小規模宅地等の特例は使えません。

この制限は、相続直前の駆け込み的な対策を防ぐために設けられたものです。

なお、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っていた場合には、この制限の適用を受けないこととされています。事業的規模の判定には、いわゆる「5棟10室」が目安として用いられます。

適用の可否は事実関係により異なりますので、個別にご確認ください。


判断の前に、確認しておきたい3つのこと

1. 空室は、評価にも収支にも効きます

賃貸割合が下がれば、評価減も小さくなります。そして当然ながら、家賃収入も減ります。

評価を下げる効果は、入居者がいて初めて成り立つものです。建てれば自動的に下がるわけではありません。

2. 3年という時間が必要です

小規模宅地等の特例まで含めて考えるなら、3年以上の期間を見ておく必要があります。

ご年齢やご健康の状態によっては、この3年が確保できないこともあります。早めに検討を始めることが、選択肢を残すことにつながります。

3. 評価減だけで判断しないこと

これがいちばん大切な点です。

アパート経営は、30年前後続く事業です。

  • 入居者は集まるか
  • 修繕費を含めて収支は回るか
  • 借入をする場合、返済は続けられるか
  • 建物は、次の世代が引き継げる状態か

評価額が5,000万円下がっても、空室続きで返済に追われることになれば、本末転倒です。

また、極端に不自然な形での対策については、財産評価基本通達によらない評価がなされた事例もあります(最高裁令和4年4月19日判決)。節税のみを目的とした短期的な取得は、慎重な検討が必要です。


まとめ

アパートを建てると、土地と建物の評価は次のように変わります。

評価方法
土地貸家建付地 自用地評価 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
建物貸家 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
さらに小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)200㎡まで50%減。ただし3年以内の制限あり

評価が下がる仕組み自体は、明確に定められたものです。使える場面では、しっかり使っていただいてよいと思います。

ただ、アパート経営そのものが成り立つかどうかは、評価の話とは別です。両方を並べて検討されることをおすすめします。

ご自宅やご実家の土地について、どの程度の評価になるのかを確認しておきたい、といったご相談もお受けしています。


※本記事は、作成時点の法令・通達に基づく一般的な情報です。評価の割合や特例の適用可否は、個別の事実関係により異なります。実際のご判断にあたっては、個別にご確認ください。

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